パリにあるルーブル美術館は世界でも有名な美術館のひとつ。
行ったことがなくても、名前は聞いたことがある人が多いと思います。
ルーブル美術館には「モナリザ」や「ミロのヴィーナス」をはじめ、数多くの傑作があります。
所蔵されているのは古代から18世紀までのもので、絵画や彫刻、工芸品など、全部で30万点のコレクションがあるのだとか。
そのなかで3万5千点が常設展示されているわけなんですが、それでもかなりの数で、全部見ようと思うならかなりの時間を要します。
見所はたくさんありますが、そのなかでも特に有名な作品。「ルーブル美術館に行ったらこれだけは見ておきたい」というようなものを紹介します。
ミロのヴィーナス
「ミロのヴィーナス」はヘレニズム美術における傑作といわれる作品。
1820年にエーゲ海のメロス島で発見されました。
作者は不明で、一般的には美の女神であるアフロディテの彫刻ではないかといわれていますが、腕や付属の装飾品は未だ見つかっていません。
ミロのヴィーナスの特徴は絶妙なバランスのボディライン。
上体の傾きであったり、布が落ちるときに脚を閉じるような動作がちょうどいいバランスを作り出しています。
ラムセス2世像
こちらは、古代エジプトにおける史上最大の専制君主であり、ルクソール神殿やカルナック神殿を建設したファラオの坐像。
作者は不明ですが、紀元前13世紀ごろのものとされています。
青年時代に作られた丸顔が特徴的で、王座や頭部、上半身などに修正を加えたような跡が残っています。
サモトラケのニケ
「サモトラケのニケ」は、エーゲ海のサモトラケ島で発見されたヘレニズム彫刻の傑作。
「ニケ」というのはギリシア神話に登場する勝利を表す女神のことで、有名なスポーツブランドのNIKE(ナイキ)の名前やロゴの由来になったものともいわれています。
この彫刻は軍船の戦闘で翼を羽ばたかせて飛び立つ瞬間をとらえたものとされており、船首に付けられていたとも、海戦の勝利を祝って神殿などに飾られていたともいわれています。
後方に張り出した翼や、海風を受けているかのような体に張り付く布、はためく布の表現がうまくされています。
ちなみにサモトラケのニケも作者は不明です。
モナリザ
こちらもかなり有名な作品。レオナルド・ダ・ヴィンチが1503〜1506年に制作した「モナリザ」です。
フランス語では、「ラ・ジョコンドゥ」といいます。
モデルとなっている女性は、作者であるダ・ヴィンチの女装姿ではないかなど、いくつか諸説がありましたが、一応2008年1月にフィレンツェの富豪ジョコンドゥの妻であるとして決着したようです。
少し上半身が右向きで、後ろに風景が描かれているのは、当時の肖像画の特徴です。
精巧な油絵の技術にも注目ですし、微笑を浮かべた表情は完璧と評されるほどですが、この絵にまつわる謎もたくさんあるので、とても興味深い作品です。
「四季」の夏
アルチンボルドというイタリア出身の画家による作品で、マクシミリアン2世がザクセン選帝侯アウグストに進呈するために制作を依頼されたもの。
「四季」というタイトルで春夏秋冬を表現した4枚の絵が飾られているのですが、なかでも一番完成度が高いとして評価されているのが、夏の絵。
夏の絵は夏野菜や果物で構成されており、とても鮮やかな色づかいです。
服や襟は、麦の収穫から着想を得ているのだとか。
四季の他の作品も同じように、野菜や果物、花などで構成されていて似たような感じです。
フランス留学中の授業でこの四季が出てきて、「この4作品のなかでどれが一番良いと思ったか」、「なぜそう思ったか」というのを発表したのを覚えています。
それほど有名な作品。
ナポレオン1世の戴冠式
ダヴィッドが描いた絵で、1804年にノートルダム寺院で行われた戴冠式の様子です。
ナポレオンが妻ジョゼフィーヌに冠を授けている場面が描かれていて、とても貴重な歴史画です。
この絵には191人もの人物が描かれているそうなのですが、それでもナポレオンがすぐ見つけられます。
これは人々の顔の向きや視線など、あらゆる要素がすべてナポレオンに焦点が合うようにうまく構成されているためです。
また、史実と少し違う部分があります。それはナポレオンの母親が描かれているということ。(中央で正面を向いて座る女性)
ナポレオンの母親は息子の結婚には反対して実際は式典に参加しなかったが、皇帝の要望によって絵の中には描き込まれています。
カナの婚宴
「カナの婚宴」はルーブル美術館のなかでも最大サイズの絵画。
この絵は、カナという村の婚礼で起きた、水がブドウ酒に変わるという聖書の奇跡の話を、王侯貴族の登場する華やかなヴェネツィアの婚宴場面に移し変えて描いています。
作者はヴェロネーゼで、絵の中で白い服を着て楽器を演奏している手前の人物はヴェロネーゼの自画像ともいわれています。
レースを編む女
フェルメール作の「レースを編む女」。
最大サイズの「カナの婚宴」の絵とは反対に、縦24cm×横21cmしかない小さな絵です。
正確な遠近法や緻密に計算された構図によって、見る人の視線を女性の手に導いています。
また、レースを編む女は天才画家サルバドール・ダリも絶賛したのだとか。
「偉大な絵は芸術家が暗示するだけで、目に見えない大きな力を感じとることができる。(中略)この娘の持つ目に見えない針を中心に、宇宙全体が回っていることを私は知っている」
サルバドール・ダリ
トルコの浴場
トルコ後宮の女性たちが浴場で過ごす様子が描かれた、アングル作の「トルコの浴場」。
この絵はアングル82歳の集大成ともいえる、最も官能的な作品。
元々は四角のキャンバスに描かれていたのだが、「のぞき穴から見たように」と丸い形に仕立て直したという説もあります。
正面に背を向けている女性は、1808年の自作「ヴァルパンソンの浴女」に描かれているもので、その絵もルーブル美術館に所蔵されています。
瀕死の奴隷・抵抗する奴隷
瀕死の奴隷(右)・抵抗する奴隷(左)という、これら2体の像は、彫刻部門で最も有名な作品のひとつ。
ミケランジェロによる、1513〜15年の作品です。
もとは教皇ユリウス2世の巨大な墓碑のために構想されたものだったが、教皇の死後に経済的理由から制作中止となった未完の作品なのだとか。
それを証明するのが、像の台の薄さや抵抗する奴隷の顔に残っている大理石の筋だと考えられています。
ハムラビ法典
「ハムラビ法典」は作者不明で、古代バビロニア王朝の街なかに建てられていた、高さ2mの石碑。
ハムラビとはバビロン第一王朝の6代目の王のことで、それまであまり振るわなかった都市に初めて支配的な地位を与えた人物です。
王と神が向かい合う場面が刻まれていますが、支配者を象徴する帽子をかぶり、顔の前に手を挙げている、祈りの姿勢をしている左が王です。
神は正義の守護神でもある太陽神シャマシュとされていて、両肩から出てるのは炎らしいです。
「マリー・ドゥ・メディシスの生涯」のマルセイユ上陸
1622年にルーベンスによって描かれた連作「マリー・ドゥ・メディシスの生涯」の1枚。
「マリー・ドゥ・メディシスの生涯」は、フィレンツェの大貴族メディチ家からフランス王家に嫁いだ女性の一生を描いたもので、この絵はマルセイユに到着した彼女を、擬人化されたフランスとマルセイユが歓迎する場面です。
王家の紋章である青地に金ユリのマントを着けているのはフランスの象徴であり、ピンクの服を着ている女性はマルセイユの象徴です。
アルカルディアの牧人たち
プッサン作「アルカディアの牧人たち」。
アルカディアというのは実際に存在する地名だが、ここでは牧人たちにとっての理想郷だとされています。
この作品は3人の牧人と黄色いロープの女性が、「我はアルカディアにも存在する」という碑文が記された石棺を見ているところを描いています。
我というのは死を示しており、この碑文が意味するのは、「どんな理想郷にも死(我)はやってくる」というもので、死に対する教訓が込められた作品になっています。
ちなみに小説「ダ・ヴィンチ・コード」でも登場する絵です。
真珠の女
「真珠の女」のモデルは当時16歳であったベルト・ゴルトシュミットという女性で、作者であるコローがイタリア旅行から持ち帰ったドレスを着ています。
タイトルにある真珠というのは、頭部をおおう透明なヴェールについた、額にかかっている飾りを指しているといわれています。
大工の聖ヨセフ
「大工の聖ヨセフ」は、若きキリストと父である大工のヨセフとの対話シーンを描いた作品。
バロック派の作者ジョルジュ・ドゥ・ラ・トゥールによる最高傑作の1つで、高度な細部の描写が印象的です。
特にろうそくが照らす部分。
暗い夜に照らされたろうそくによる、キリストの指を透けて輝くような光の表現が注目すべきところです。
また、ヨセフには我が子が磔刑(たっけい)になるという暗い未来をわかっていて、額や目には不安が現れています。
ルーブル美術館は見所たくさん
ここで紹介した作品以外にも有名な作品はまだまだあると思います。
それほどルーブル美術館は見どころが多く、美術館賞が好きな人にとってはたまらないと思います。
有名な作品だけでも見ておきたいという人は今回紹介したような作品をチェックしてみてください。
ただ、場合によっては展示されていない場合もあります。
僕は何度かルーブル美術館に行きましたが、「サモトラケのニケ」は最初に行ったときしか見れませんでした。
これは、たしか修復作業が行われていたからだったと思うんですが、もしかしたら他の作品もなにかしらの理由で展示されないこともあるかもしれません。
あと、「モナリザ」のまわりには人がいっぱいで、近くで見るのはなかなか大変です。
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