『孫社長のむちゃぶりをすべて解決してきた すごいPDCA―――終わらない仕事がすっきり片づく超スピード仕事術』の著者である三木雄信さんはソフトバンクの元社員で、社長室長を務めていた方。
孫社長から任される仕事はむちゃぶりの連続だったそうですが、孫社長は誰もが無理だと思うようなことでもこなしていたので、孫社長の仕事に対する向き合い方を徹底的に分析したといいます。
その結果、孫社長には次のような特徴があることに気づくのですが、
- 「目標へのこだわり」が異常に高い
- 目標を達成するために、「ありとあらゆる方法」を試している
- 「数字で厳密に」試した方法を検証している
- 「常にいい方法」がないかと探っている
これらは、PDCAに忠実な特徴だということだと分かりました。
PDCAとは、Plan(計画)・Do(実行)・Check(評価)・Act(改善)の4段階を繰り返し行うという、業務改善のための手法のこと。
孫社長は、このPDCAに基づいて仕事をしていたわけですが、従来のPDCAと違うのがそのスピード感。高速でPDCAサイクルを回しているからこそ、孫社長をはじめ、ソフトバンクの社員は仕事の効率を上げ、企業全体的にも急成長してきました。
「なかなか仕事が進まない」、「成果が出ない」という人は、高速PDCAのやり方を参考にしてみてください。
高速PDCAの8つのステップ
高速PDCAの流れは以下の通り。
- 大きな目標を立てる(週、月単位など)
- 小さな目標を立てる(1日が原則)
- 目標達成に有効な方法をリストアップする
- 期間を決めて、すべての方法を同時に試していく
- 毎日、目標と結果の違いを検証する
- 検証をもとに、毎日改善する
- 一番すぐれた方法を明らかにする
- 1番すぐれた方法を磨き上げる
従来のPDCAは、計画に多くの時間と労力をかけ、効果がありそうな方法の見立てをつけてから実行、検証、改善をしますが、うまくいくかどうかは実際にやってみないとわからないですし、これだと時間がかかりすぎてしまいます。
高速PDCAのやり方は、大きな目標と小さな目標を決め、考えられる方法はすべて一気に試し、毎日検証しながら、一番効果のあった方法に注力するというもので、計画よりも実行と検証に力を入れているからPDCAが早く回るのです。
高速PDCAがどいういうものかわかったところで、具体的なポイントについて紹介します。
PLAN-目標を立ててあらゆる方法をリストアップ
計画段階ですることは、大きな目標と小さな目標を立てること。
そして、目標は必ず数字で設定し、いつまでに達成するかという期限を設けることです。
大きな目標はナンバーワンになること
まず大きな目標の設定ですが、「ナンバーワン」を基準に決めましょう。
会社であれば、その業界で売上が一番多い会社であったり、成長が早い会社であったり、一番の業績を上げている会社。
個人の営業マンなら、その部署でナンバーワンの営業マンの成績を基準にします。
目標の数字としては、ナンバーワンより少し高い数値を設定するのがポイント。目標があまりにも高すぎると達成が難しく、モチベーションを保つのも大変になるのでかえって逆効果だからです。
なぜナンバーワンを目指すのかというと、ナンバーワンになれば、「人・情報・お金」が自然と集まってくるからです。
小さな目標は毎日できること
小さな目標を決めるときのポイントは、毎日できるかどうか、具体的なアクションであるかどうかの2つです。
PDCAを回すサイクルが月間や週間だと遅すぎますし、毎日のアクションを検証することで、失敗に早く気づくことができるので、大きな痛手にならないうちに、細かく改善を繰り返すことができます。
あくまで、これらの目標設定は仮のものです。
プロセス分けも品質の定義も、最初から完璧である必要は全くなくて、PDCAを行うなかで、うまくいったら同じことを続ければいいですし、うまくいかなかったら、品質の定義と毎日の目標値を見直せばいいんです。
重要なのは、毎日の勝ち負けの基準を決めること。
大きな目標と同様、小さな目標も数字で設定します。
1日1件の契約を取るといった感じで毎日の目標を立てたとして、契約を取れれば勝ちなので今日のやり方は合っていたのだなと自信になりますし、もし契約が取れなければ負けなので、改善策を考えなければいけません。
こうやって毎日の目標に対する勝ち負けを知ることは、仕事に対する向き合い方など、大きな変化を与えてくれるはずです。
DO-同時に全ての方法を試す
目標を達成するためには、おそらく色々な方法があると思いますが、一番最適なものを手に入れる確実な方法は、それらを1つずつ試すのではなく、同時に全てを試すことです。
同時にすべての方法を実行する理由
- スピードでライバルに勝てる
- 最善の方法を探せる
- 各方法を正確に比較できる
1つずつ試しながらしていくと、時間がかかりすぎますし、ライバルに先を越されないないためにも思いついたあらゆる方法はすべて同時進行で行って、結果を検証するのが、一番効果的です。
同時に全ての方法を試すためのコツ
①期限を決めて、可能性のある手法をすべて一斉に試す
②一番効果がある方法を見極めたら、あとはそれだけを実行する
③スタートからある一定期間は成果が出ないか、マイナスになることを想定内とする
高速PDCAの特徴は、全ての方法を試して、その中で最善策を見つけ出すことですが、最善策を見つけ出すまでの間は、成果が出ませんし、マイナスになることもあります。
ですが、最善策を見つけてそこに時間と労力を集中させることで結果を出し、それまでのマイナスをプラスに変えていくという方法なので、一定期間成果が出ないかもしれないことは想定しておかないといけません。
CHECK-結果は数字で検証
毎日、目標と結果の違いを検証するわけですが、その結果は数字で厳密に検証する必要があります。
ソフトバンクでは、どんな相談や報告でも、数字に基づいて話せなければ評価されないそうで、売り上げや利益はなぜこの数字で、その理由や原因は何か、どうすれば何%の数値改善が見込めるかということを、すべて数字を理解し、語れる力が求められます。
高速PDCAでは、目標の設定、検証、プロセスの見える化など、あらゆるところで数字を使っています。
プロセスの見える化においては、「多変量解析」と「T字勘定」という2つの方法が紹介されていました。
多変量解析とは、それぞれの要因がどのように関連しているかを明らかにするのに役立つ統計手法のことで、T字勘定とは、簿記で使われている、貸方と借方の仕訳をわかりやすく図解する手法のことです。
ACTION-一番いい方法だけを磨く
高速PDCAは、全ての方法を同時に試し検証することで、どの方法が効果があったのか、どの方法だと効果がないのかということがわかります。
そうやって見つけた一番優れた方法だけを磨き上げることに注力します。
この方法は、最初のうちはマイナスになるかもしれませんが、結果的には勝負に勝てる一番最適な方法です。
実際、ソフトバンクも2001年度から2004年度まで4期連続で赤字だったそうですが、実はこのときソフトバンクはADSL事業に参入し、あらゆる販売手法や販売チャネルを試していたのです。
最初は赤字になってもいいから、全ての方法を試しながら結果を検証し、最終的に一番効果のある方法を選んで実行するという考えが孫社長にはあり、結果的に2005年から黒字に転じました。
高速PDCAは誰でも実践できる
高速PDCAのすごいところは、スピード感ももちろんですが、質にもこだわっているところ。
決してやみくもに早くPDCAサイクルを回しているのではなく、数字で厳密に検証し、結果が出るような方法をとっています。
本書では、経験や能力に関係なく、誰でも真似できるようにと体系化されて、詳しく書かれているので、ぜひこの高速PDCAを試してみてください。
参考書籍
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