旅の本

『旅のラゴス』一人の旅人が生涯をかけて旅を続ける理由とは

著者:筒井康隆
出版社:新潮社
発売日:1994/3/25

20年以上も前に出版された本作『旅のラゴス』。

この本が最近になってなぜか特に売れ行きが伸びたらしく、出版社の新潮社もなぜこれほど話題になったのか、大きな理由がわからないそうです。

たしかにネットで取り上げられることが増え、本屋でも見かけることが多くなりました。僕もその流れでこの本を知りましたが、まさかそんなに前に刊行された本だったとは。

旅のラゴスのあらすじ

この本はラゴスという旅人の一生を描いた本。

北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か?異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編。

本に書かれていたあらすじはざっとこんな感じ。

物語の舞台は文明が急速に発達しすぎてしまったがために、その高度な文明を失った世界。

電気も機械もなければ、コーヒー豆の存在さえ知られていないような世界です。

その代わり、人びとは超能力が使えるという少しSF要素が含まれています。

超能力といっても、集団で違う場所に一瞬で移動したり、壁抜けをしたり、人の心が読めたり、宙に浮いたり、なんでも記憶できたりといった程度のもので、ビームとか出して戦闘するようなシーンはありません。

むしろ物語自体は一人の男が旅をするという、ごくごく普通なものです。

旅をする主人公の男の名前はラゴス。

最初は青年だったラゴスも、物語の終盤には60歳を過ぎています。まさに一人の人間の一生を描いていて、その生涯をかけて旅をしてきたラゴスの生き様や人々との出会い、別れが書かれています。

ラゴスは北から南へと旅をしていました。その理由は、高度な文明の世界で生きた人たちによる書物を読むためです。

南でそれらの書物を読んで知識を得て、再び北を目指しますが、ラゴスの旅の目的は発達した文明の知識を故郷に持ち帰ることなのでしょうか。

それは実際に読みながら考えていただければと思います。

旅のラゴスを読んだ感想

個人的にはすごいおもしろい話だと思うし、読んでみてよかったです。

ラゴスの人生は2度も奴隷にされてしまったり、国王になったりと、まさに波乱万丈ですが、それこそ旅であり人生なのだと色々考えさせられました。

なにより前向きに旅を続けるラゴスにとても感情移入してしまいます。

人と出会っては、また別の地へと旅立ってしまうラゴスですが、とにかく行く先々で人に好かれます。男からも女からも。

読んでいて自分でもラゴスの魅力がわかるような気がしました。

最後のシーンはおそらく様々な考察がされるであろう結末。そういった部分も踏まえてもう一度読んでみようかなと思います。

一人の人生を描いている長編の物語とはいえ、旅の道中での出来事がそれぞれ短編でまとめられているような感じなので、とても読みやすいです。

一気に読むのもよし、章ごとに少しずつ読み進めるのもよしです。

最後に、作中で出てくるラゴスの言葉を紹介。

人間はただその一生のうち、自分に最も適していて最もやりたいと思うことに可能な限りの時間を充てさえすればそれでいい筈だ。

うん。いい言葉。やりたいことをやろう。

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