やすらぎの郷にたたずむ瑠璃光院
京都と滋賀にまたがる比叡山の麓に、自然にあふれた八瀬(やせ)という地域があります。
八瀬はその昔、湯治場、つまり療養するための温泉地でした。というのも、八瀬は矢背とも記されるように、壬申の乱で背中に矢傷を負った大海人皇子(天武天皇)が八瀬の釜風呂で傷を癒したという話があり、多くの貴族や武士からやすらぎの郷としてこの地は愛されてきました。
そのようなやすらぎの郷に瑠璃光院はあります。
近くに駐車場がないため、アクセス方法はバスか電車。叡山電鉄の八瀬比叡山口駅で下車すると、右手に橋があります。
橋を渡って右に向かって川沿いを歩くこと約5分。瑠璃光院の山門があります。
瑠璃光院の歴史について
八瀬には明治に建てられた別荘があり、三条実美はこれを喜鶴亭と名付け、茶室名として現在も受け継がれています。
昭和初期には、一万二千坪もの広大な敷地に格調高い数奇屋造りの建物や庭園がつくられました。
数奇屋造りとは、茶室風を取り入れた日本の建築様式です。
数奇屋造りの書院は、京数奇屋造りの名人といわれた中村外二、八瀬の自然を借景とした庭園は佐野藤右衛門一派がつくったと伝えられています。
借景とは日本造園における造園法のひとつで、山などの景色をまるで庭の一部に見えるかのように利用する方法です。
当時の京都を代表する京数奇屋造りの棟梁と庭師による建築、庭園は現在まで名建築、名庭として多くの人に親しまれています。
囲碁本因坊戦や将棋名人戦の舞台にもなりました。
瑠璃光院は春と秋だけ一般公開している
元々、瑠璃光院はそこまで知られていませんでしたが、近年注目を集めています。
一時は、文化財保護のため一般公開もされなくなりましたが、拝観を望む声が多く、新緑の美しい春と紅葉の鮮やかな秋にだけ、期間限定で特別公開されています。
春には青もみじや馬酔木(あせび:ツツジ科の花)の群生地として、秋には紅葉の名所として名高い瑠璃光院。
今回訪れたのは、紅葉の鮮やかな秋。
異なる種類のカエデの木々が黄色や橙色、紅色など様々な色に移ろいながら、日々違う景色を見ることができます。
平成28年 秋の特別拝観
拝観時間:10:00 〜 16:30
拝観料:一般2000円
平成29年 秋の特別拝観
拝観時間:10:00 〜 17:00
拝観料:一般2000円
瑠璃光院の紅葉は美しかった!しかし・・・
瑠璃光院に訪れる前、ネットであれこれ調べていました。
どの内容も瑠璃光院の新緑と紅葉に対する賞賛ばかり。
「美しすぎる」「幻想的だ」「春と秋だけ見られる絶景」などの言葉が並んでいました。
その言葉たちに添えられるように、素晴らしい写真がたくさん載せられていて、写真を見るだけで、息をのむような美しさと静けさを感じました。
瑠璃光院にはいくつか見所があるのですが、一番人気があるのは二階の窓から見る庭の景色。
窓枠が額縁のような役割を果たし、窓の外に広がる紅葉の景色が床や机に映り、それらが織りなして独特の空間を創り出します。
評判通りすごい綺麗でした。
一つ残念に思えたのは、その空間でゆっくりとやすらぎを感じることができなかったことです。
瑠璃光院の紅葉が美しすぎるがゆえに、それを一目見ようと多くの参詣者が訪れます。
まるで義務かのように皆が写真を撮り、撮り終えたら次の人のために場所を譲る。それほど多くの人で溢れかえっています。入場制限をしているのにです。
まるで時が止まったかのような静けさのなかで、綺麗な紅葉を眺めながらその場の雰囲気を感じたかったです。
それをゆっくり楽しむことはできなかったですが、他の人と同じように自分も夢中で写真を撮り、あとから写真を見て「やっぱり綺麗だな..」と。
「春の青もみじも見てみたいし、来年も行きたい。5分でも10分でもいいからここで静かな時間を過ごしたい。」瑠璃光院はそう思える場所でした。
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