日本

相田みつを美術館で学ぶ「負けることの尊さ」

詩人であり書家でもあった、相田みつを。

つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの

「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」という有名な言葉をはじめ、心に突き刺さる言葉の数々を独特な書体で表現した作品は、相田みつをが亡くなって以降も、多くの人に愛されています。

相田みつをについて

相田みつを
1924年、栃木県足利市に生まれた相田みつをは、19歳で書家を志して岩沢渓石に師事し、本格的に書の修行を積みました。

相田みつをの字はとても独特で、見る人によっては全然上手くないと言う人もいますが、相田みつをは元々正統派な書家で、むちゃくちゃ綺麗な字を書きます。

その腕前は、書の最高峰のひとつとされる毎日書道展に7年連続で入選していたほど。

そんな正統派な書家だった相田みつをでしたが、手本に忠実に書くことや専門家でないと理解できないような書のあり方に疑問を抱くようになり、誰でもわかるような簡単な言葉を独特な書体で書く独自の作風を確立します。

そうして相田みつをが60歳の頃に出版したのが「にんげんだもの」。

代表作となったこの詩集はミリオンセラーとなり、遅咲きながら多くの人たちに親しまれるようになりました。

負けることは尊い!?相田みつをの人生観

そんな相田みつをの作品が展示されている「相田みつを美術館」に行ってきました。

相田みつを美術館は、有楽町駅より徒歩3分、東京駅より徒歩5分の東京国際フォーラムの地下1階にあります。

展示作品は基本的に写真撮影禁止なのですが、チケット売り場のところに写真撮影OKのスペースがあったので、それらの作品だけ紹介します。

相田みつを美術館

相田みつを美術館

相田みつを美術館

相田みつを美術館

相田みつをの書とテクノロジーを融合させたデジタル作品も。

相田みつを美術館

のぞくと「水」とか「逢」の字が映し出されていました。

相田みつを美術館

これは展示スペースから展示スペースに移動する間にあったもの。

相田みつを美術館

「水書板」といって、水だけを含んだ筆で書くと、墨で書いたようになるというものでした。

相田みつを美術館は時期によって様々な企画展を行い、その度に作品を入れ替えているみたいで、僕が行った時は「負けることの尊さ」(第71回企画展:2018年6月5日〜9月30日)がテーマでした。

相田みつを美術館,負けることの尊さ

人生は思い通りにいくこと(勝つ)の方が少なく、思い通りにならない(負け)ことの方が多い。そのため、負けることは人生の基本だというのが、相田みつをの人生観だったそうです。

素晴らしい作品はたくさんありましたが、「負けることの尊さ」というテーマでいうと、「まける人のおかげで勝てるんだよなあ」という作品がとても印象的でした。

勝つひとがいるということは、反対に負ける人もいる。受験に成功する人がいるということは、受験に失敗する人もいる。見方を変えれば、負ける人がいるから勝つ人がいるということ、だからこそ負けは尊いんだと。

勝つことがいけないことではないですが、負けることは、決して恥ずべきことではないということです。

また、「受身」という作品では柔道の基本である受身は負ける練習だとも言っています。

柔道の基本は受身
受身とはころぶ練習 まける練習
人の前にぶざまに恥をさらす稽古
受身が身につけば達人
まけることの尊さがわかるから
みつを

2時間ぐらいじっくり作品を見て回りましたが、もっと見ていたいと思えるほど、作品の魅力は大きなものでした。

相田みつをの書は、長い詩をぎゅっと凝縮したものが多く、非常にシンプルです。(長い文章を書いている作品もありますが)

詩の中で一番言いたいことを書で表現し、独特な字で親しみを持たせている。柔らかい字なんだけど、どこか力強さも感じる、そういった印象を受けました。

書の技術もすごいですが、何より言葉の重みがすごい。

人の心を動かすような書を書くことは簡単なことではないですし、書家としても活動していきたいと考えている自分にとっても刺激的でとても勉強になりました。

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