大航海時代における経度と緯度の重要性
イギリスのロンドン中心部から東に5キロ行ったところにグリニッジという町があります。
河港都市グリニッジとして世界遺産にも登録されていて、旧王立海軍学校があったり、イギリスの発展に大きく貢献した港町です。
船のモニュメントなどもたくさんあります。
この町にあるグリニッジ天文台(旧王立天文台)は本初子午線が通っている場所で、グリニッジ子午線ともいわれています。
本初子午線は社会の授業などで聞いたことがあると思いますが、経度0度0分0秒と定義された経線のことをいい、この本初子午線を基準に右側が東半球、左側が西半球となります。
大航海時代と呼ばれていた15世紀半ばから17世紀半ばにかけては、もちろん飛行機などまだありませんし、船が長距離移動においての主な交通手段でした。
船の航海において、経度と緯度の把握が必要とされていました。航海中の現在地がわからなくなるからです。
でも実際は当時の技術では把握しきれていませんでした。
緯度に関しては赤道を基準としていて、海面に対する太陽や北極星の角度から概ね計測できていたのですが、経度に関しては、計測できていませんでした。
経度を測るための明確な基準がなかったからです。
そのため当時は、目的地と同じ緯度の場所から出発し、まっすぐ進むという方法をとっていましたが、航路を少しでもずれれば現在地を見失うなど、危険な航海になっていました。
実際に英国の船が座礁し、1000人以上の人が命を失うという事件も起きてしまいました。
航海技術の向上と経度を把握するという課題
英国としては航海技術を向上させたいと思っていましたが、その一環として経度を正確に計測しなければいけないというのも重要な課題として捉えていました。
1660年から1685年までイングランド王に在位していたチャールズ2世もその一人です。
最初に出てきたグリニッジですが、彼の宮殿はそこにありました。
そして宮殿の横に天文台をつくったのがチャールズ2世でした。
なぜ天文台をつくったのかというと、あるフランス人が月や他の星の位置関係から経度を測定できるのではないかと言ったからなんです。
おそらくまだまだ天文学も発展途上のときだったのでしょう。
経度の測定法を見つけるためにも天体の動きを把握する必要があるということで、天文台がつくられました。
こちらがグリニッジ天文台。
いろいろな道具がありました。
上に向けて天体を観測するため縦長の窓にしていたそうです。
これは角度を計っていたんですかね。
ついに経度の測定法が!見つけたのは時計職人
天体観測を正確に行えるようになるには膨大な時間と知識が必要だったため、グリニッジ天文台がつくられてからも数十年経っても正確な経度の測定法が見つけられませんでした。
経度ってすごい複雑なものだったんですね。
もちろんその後、経度の測定法は見つけることができるのですが、それを見つけたのは時計職人のジョン・ハリソンでした。
まさかの時計職人。しかもジョン・ハリソン。今では時計ブランドとして有名ですね。
経度の測定法は天文学による研究の他にも様々な研究がされていました。
そのなかでこの方法論は可能性としては高いんじゃない?と言われていたのが、出発地と現在地の時間を比較するという時間に関する方法論でした。
要するに経度の測定には正確な時間を知る必要があるということでした。
その方法論を研究していたジョン・ハリソンが開発したのがクロノメーターとよばれる、船の揺れとか温度の変化にも影響されない懐中時計でした。
今では特別すごそうじゃないように思えるかもしれませんが、当時ではとても画期的な発明でした。
当時は振り子時計が使われていて、波による船の揺れなどの影響を受けて時間が正確に計れなかったそうです。
それがクロノメーターならかなり正確な時間を計ることができ、これにともなって英国の海洋技術は急速に発展していきました。
ですがこの時間を利用した経度の測定法がみつかったとき、他の国の研究者たちも同じような方法を見つけていました。
経度を測定するためには、基準点を設ける必要があり、その基準点がグリニッジ天文台に決まったわけですが、それは1884年にワシントンで行われた国際会議で決定しました。
反対意見もあったそうですが、英国の海洋技術の発展やグリニッジ天文台を基準とした海図が提案されたことで、決まったようです。
ロンドンから近いということもあり、本初子午線の場所を一目見たいと訪れる人たちがたくさんいます。
みんなが並んでいるのがちょうど本初子午線で経度0°0″0’の場所です。
これが本初子午線。東半球と西半球を股にかけるときがくるとは思いもしませんでした。
横には世界の都市の経度が書かれています。もちろん東京もありました。
みんなが並んでいた先頭にはこんなものがありました。
余談ですが、グリニッジ天文台の屋根のところに赤い玉があります。
こちらです。この赤い玉は報時球(Time Ball)というもので、時間を知らせるためのものです。
13時前になるとだんだん風向計の部分まで上がり、13時ちょうどに落ちるという仕組みになっているそうです。
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